『私は私のままで生きることにした』

『私は私のままで生きることにした』表紙

『私は私のままで生きることにした』裏表紙

最近、表題の本を読みました。

一見すると「我が道をいこう!」「自分の人生を大切に!」という感じの、「じぶんごとの本」にも見えそうなエッセイですが、実際は、もっともっと広い範囲が扱われておりました。
表紙や帯に書いてあることは、もちろん気持ちいいくらいにズバッと書いてあるのですが、筆者がそれらのことについて語る時、その根拠としているものが、常に「社会」なんですね。

「自分に起こる葛藤」だけでなく、その葛藤を生み出す社会や、その中に在る人々との関わりを絡めて語られるので、視野がすごく広い…という感じ。

出色だなー!と思ったのは「Part 5(第5章)」です…ちょっと一部を引用してみますね。

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これまで何冊かの本を出して、個人的な慰めとエールを送った。
けれど、個人的な慰めを送っているつもりが、
この社会が直面している問題の表面だけをすくって、
社会的な議論を遠くに押しやってしまったのではないだろうか。
石ころにつまずいて転んだのをいちいち慰めてもらおうとするのは、
集団的な後退だと思う。
誰も石を片付けようとせず、ただ傍観するだけ。
機知に富んだたとえ話で、軽く、
クールに受け流すほうが楽かもしれない。
私だって、どうせなら深刻な話はしたくない。
でもときには、難しくて、複雑で、
おもしろくない話もする必要がある。
私たちは、心してそういう話に耳を傾けたほうがいい。

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と、こんな具合。
コロナの時代に突入した今、社会のかかえる様々な問題が、いやがおうにも浮き彫りになってきました。
本当に苦しい時なので、「楽しさ」や「癒し」を求めたくなるのが人情ですし、そういうものは、心の休憩所として大切だと思います。
ですが、同じくらい…いえ、それよりもっとたくさん、社会に向き合い、その話をする必要があると感じます。その心の準備として、また、その「たたかい」の最中の栄養として、おすすめの一冊です。

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