昨年12月から今年の2月まで開催したオンライン作品展『憶』の出展作品紹介も第3弾です。
本作は2019年の『平和美術展』(美術家平和会議さん主催、東京都美術館にて)に出展した作品ですが、『憶』展の連作の中に組み込みました。
他3点は新作なのですが、その流れを補強するために「何かひとつ入れたい…」と考えていたところ、本作が思い浮かんだのです。
制作した当時も社会の分断が進んでいましたが、このコロナ禍の数年で、それはより悪化したと感じています…
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作品3『Holes』
世の中のそこらじゅうに「黒い穴」が開いていて、毎日たくさんの人が堕ちていきます。
権力に煽られ、差別的言動をしたり、自己責任論を主張しながら、「彼ら」と一体になって自ら穴に向かっていく人もいれば、表面的な「中立」をうたいながら正しいことに目をつむっているがために、ジワジワと穴に沈んでいく人もいます。
世の中を、正しいレールに戻そうとする人たちと、権力を悪用する人たちを「どっちもどっち」としてしまう考え方や、投票権を脇に放って「政治的なものに関わらない」という姿勢は穴への直行便ですが、気づいていない人もかなり多い。
でも、この穴の吸引力は絶大で、誰でも、いつでも、穴に堕ちる危険がありそうです。
穴に堕ちないためには、独りでは難しい。
「黒い穴に気づいた人」と共に行動することが大切で、周りの人が堕ちそうになった時には助け、自分が堕ちそうになった時には助けてもらいます。普遍的な「正しさ」を共通点に身を守りあうのです。
もし、自分が「権力を悪用する人」でないのなら、たたかう相手は、隣国の人々ではなく、路上に出て声を上げる人や、正しいことを発信しようとする著名人でもなく、フェミニストでもなく、黒い穴、黒い大きな力であると思います。